GPT-6 Astraが、Valveのパズルゲーム『Portal』を最初から最後まで通しでクリアしました。人がコントローラーを握った場面はありません。2026年9月5日に完走、所要時間は約23時間43分。
やったのはcozyblazeという開発者で、仕組みはGitHubに全部置かれています。コードが公開されているので、話の中身を自分で確かめられるタイプの実験です。
AIはどうやってゲームを操作したのか
いちばん面白いのは、ゲームを止めながら進めている点です。
SourcePauseToolという既存ツールを改造し、モデルが考えている間はゲームの時間が止まるようにしてあります。止まっているあいだにAIが受け取るのは、画面のスクリーンショット、プレイヤーの座標、カメラの角度。それを見てJavaScriptで次の行動を組み立て、「Nティック分だけ進めろ」と指示を出す。進んだ結果をまた見て、次を考える。
この繰り返しです。つなぎ役はローカルで動くMCPサーバーで、127.0.0.1のポート27182でゲーム側とやりとりしています。
公開されている動画では、この停止時間はカットされています。だから見ていると滑らかにプレイしているように見えますが、実際は一手ごとに世界を止めて考えているわけです。
「人の助けなし」はどこまで本当か
ここは正確に書いておきます。
リポジトリの記述によると、23時間43分という数字には処理容量の制限による中断が含まれています。エラーで止まったあと再開させた場面があり、途中でFastモードに切り替えてもいる。つまり「一度も手を触れず放置していたら終わっていた」ではありません。
ゲームの攻略そのものについては、最初に目的を伝えたあとは人が解き方を教えていない。そこが「単独クリア」と言われている部分です。運用の面倒は人が見ています。
この区別は、業務でエージェントを使おうとしている人にはそのまま効いてくる話でしょう。
かかった費用
THE DECODERの報道では、消費したトークンはAPIの定価換算で少なくとも570ドルとされています。1ドル154.30円で約8万8000円。
ただし実際に開発者が払ったのはこの額ではありません。月200ドルのCodexサブスクリプションを使っているため、支払いはずっと少なく済んでいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデル | GPT-6 Astra(推論の強度は最大) |
| 完走日 | 2026年9月5日 |
| 所要時間 | 約23時間43分(中断を含む) |
| API定価での試算 | 570ドル以上(約8万8000円) |
| 実際の支払い | 月200ドルのCodexサブスク枠内 |
| 操作の経路 | MCPサーバー経由でSourcePauseToolを制御 |
なお、リポジトリ側にはトークン数や費用の記載がありません。570ドルという数字は報道が出しているもので、一次資料で裏が取れているわけではない点は書いておきます。
この実験が示しているエージェントの現在地
Portalは、ポータル銃で壁に穴を開けて空間をつなぐパズルゲームです。慣性を保ったまま別の場所に飛び出すといった、物理の理解が要る場面が繰り返し出てきます。攻略サイトを暗記していても、画面を見て今どこにいるかを掴めなければ進めません。
それを24時間かけて解いた。逆に言えば、人間なら数時間で終わる内容に24時間かかっているとも読めます。
実務に引き寄せるなら、ここで効いている能力は「画面を見て、状態を把握して、次の一手を決めて、結果を確認する」という輪です。ブラウザ操作の自動化も、社内システムの操作代行も、構造としては同じことをしています。ゲームだから遊びの話に見えるだけで、動いている仕組みは業務のエージェントとまったく同じ。
開発者はGPT-6 Astraを「これから先、私たちが手にする中でいちばん出来の悪いモデル」と表現しています。今後より良くなっていく、という意味です。
出典
2026年9月9日に確認しました。仕組み・所要時間・完走日はGitHubで公開されているリポジトリの記述に基づきます。費用の試算はTHE DECODERの報道によるもので、一次資料には記載がありません。円換算はECBが公表する2026年9月8日の参照レートで計算しました。

