性能は上がり続けますが、こちら側のやることが根本から変わるわけではありません。
何が変わって、何が変わらないのか。分けて考えます。
変わってきたこと
できる作業の幅が広がりました。
文章だけだったものが、画像も音声も扱うようになった。長い文書を丸ごと読ませられるようになった。手順を分けて実行させられるようになった。
値段も下がっています。同じ作業にかかる費用が、年単位で見ると大きく変わってきました。試すことの負担が減ったぶん、使える場面は増える。
変わっていないこと
仕組みの根っこは、公開されている論文の枠から出ていません。
次に来る語を確率で選ぶ形は同じです。だから、根拠なく答えを出す性質も消えていない。学習を終えた時点より後のことを知らない性質も残っています。
検索と組み合わせる、外部の道具を使わせるといった工夫で補われていますが、補っているだけです。確かめる役が要ることに変わりはない。
身につけておくとよいもの
| 技能 | なぜ |
|---|---|
| 問いを立てる | 何を聞くかは自分にしか決められない |
| 一次資料に当たる | 正しさの最後の拠り所になる |
| 説明する | 使った結果に責任を持つために要る |
| やめる判断 | 使わない場面を選べるかどうか |
操作の細かいやり方は、すぐ古くなります。指示の書き方の技も、モデルが変われば要らなくなる。追いかける対象としては割に合いません。
新しい情報との付き合い方
発表は毎週のように出ます。全部を追うのは無理です。
追うなら、自分の仕事に関係する領域だけに絞る。関係しない領域の新機能は、必要になったときに調べれば足ります。
「すごい」という評判より、何ができるようになったかの一次情報を見たい。公式の発表と、実際に触った人の記録。この2つで、だいたい判断できます。
乗り換えられるようにしておく
今いちばん良いサービスが、来年もそうだとは限りません。
この数年、上位の顔ぶれは何度も入れ替わってきました。ひとつのサービスに深く合わせて業務を組むと、乗り換えるときの費用が大きくなる。
対策としては、社内に溜めるものを移せる形にしておくことです。指示文、用語の一覧、確認の手順。これらが手元のファイルとして残っていれば、どこに移っても再現できます。
逆に、サービス側の機能に埋め込んだ設定は移せません。使い分けを決めておきたいところです。
仕事がなくなるかどうか
よく聞かれる問いですが、職種の単位では答えが出ません。
置き換わるのは職業ではなく、作業だからです。ひとつの職種の中に、置き換わる作業と残る作業が混ざっている。
自分の仕事を作業の単位で書き出してみると、見通しが立ちます。手順が決まっていて、判断が要らず、間違えても取り返せる作業から順に置き換わる。
残るのは、判断が要る作業と、責任を負う作業です。ここに時間を移せるかどうかが、実際の分かれ目になります。
規制の動き
法律の側も動いています。
欧州では包括的な規制が段階的に適用に入り、日本でも指針や法整備の議論が続いています。事業で使うなら、この動きは無視できません。
追い方としては、条文を読むより、所管する官庁が出す指針を見るほうが実務に近い。更新も早く、想定される場面が具体的に書かれています。
小さく試して残す
新しい機能が出るたびに全社で導入する必要はありません。
ひとつの業務で、2週間試す。速くなったか、やり直しが減ったかを見る。効かなければやめる。この単位なら、失敗しても損が小さい。
効いた場合は、手順を文書に残します。うまくいった理由を書いておかないと、担当が変わった時点で消えます。
残す先は、社内の誰でも読める場所に。個人の手元に置くと、結局は共有されません。
結局のところ
道具として見れば、扱い方は他の道具と変わりません。
できることを知る。できないことを知る。任せる範囲を決める。結果を確かめる。順番はこれだけです。
性能が上がっても、この4つは残ります。むしろ、できることが増えるほど、任せる範囲を決める作業の重みが増していく。
技術の側を追い続ける必要はありません。自分の仕事の側を、よく知っておくほうが効きます。
どの作業に時間がかかっているか。どこでやり直しが起きているか。これが見えている人は、新しい道具が出たときに使い道をすぐ判断できます。
出典
仕組みの基礎と、残る性質については下記に基づきます。

