全部を疑うと時間が足りず、全部を信じると事故が起きます。
何を確かめ、何を流してよいのか。判断の基準を見ていきます。
確かめる量は使い道で決まる
同じ回答でも、扱いを変える必要があります。
自分の理解のために聞いたことと、資料に書いて配るものでは、求められる確かさが違う。間違えたときに誰が困るかで決まります。
| 使い道 | 確かめる範囲 |
|---|---|
| 自分の理解のため | 引っかかった箇所だけ |
| 社内で共有する | 数字・固有名詞・日付 |
| 社外に出す | 上記に加えて出典を原文で確認 |
| 契約や金額に関わる | 全文。人の目を2人入れる |
外れやすい4つ
確かめる箇所を絞るなら、この4つです。
数字。桁や単位が変わっていても、文として自然に読めてしまいます。日付。年度と暦年の取り違えが起きます。固有名詞。実在しない製品名や、似た別会社の名前が入ることがある。出典。挙げられた資料そのものが存在しない場合があります。
確信がないときに黙るより推測したほうが点になる構造が、学習と評価の仕組みに残っています。断定の形で書かれていても、根拠があるとは限りません。
出典の確かめ方
リンクが付いていると、確かめた気になりやすい。
その場で検索してから答える機能を使っても、示されたページに本当にその記述があるとは限りません。要約の過程で、別のページの内容と混ざることがあります。
開いて、その一文を目で見るまでは確認したことになりません。これは手間ですが、省くと意味がない工程です。
論文なら著者名と番号、法令なら条番号と改正の施行日まで見ます。名前が合っていても中身が違うことがある。
聞き方で楽にする
後から確かめる手間は、指示の出し方で減らせます。
「確かでない部分には印を付けて」と頼む。断定の形が緩み、どこを見ればよいか分かります。
「原文から引用しながら答えて」も効きます。引用があれば、その箇所だけ原典と突き合わせればよい。
「分からないものは分からないと書いて」と先に伝えるのも有効です。埋めようとする傾向を抑えられます。
二度聞く
同じ質問を、別の会話でもう一度聞く手があります。前のやりとりを引きずらせないのが条件です。
答えが揺れるなら、その部分は当てにならない。安定して同じ答えが返るなら、学習の中に根拠がある可能性が高い。
完全な検証ではありませんが、どこを重点的に確かめるかの目安にはなります。手間も小さい。
自分の得意分野で試す
精度の見当をつける方法があります。
自分がよく知っている分野で質問してみる。どこが合っていて、どこが怪しいかを、答え合わせなしで判断できるからです。
そこで見えた外し方は、知らない分野でも同じように起きていると考えたほうがいい。細部が惜しい、言い切りが強すぎる、古い情報が混ざる。癖は分野をまたぎます。
分野による差も分かります。文章が大量にある領域ほど安定し、日本の実務慣行や業界固有の規則は当てになりません。
確認が形だけになる
繰り返すほど、見る目が雑になります。
何度も問題がなければ、次から見なくなる。意志の弱さではなく、注意の性質です。ずっと同じ緊張を保てる人はいません。
対処は、見る箇所を絞ること。全部を見ようとするより、4つだけを毎回見るほうが続きます。
重要な文書だけ、別の人にも見てもらう形にすると、なお確かです。同じ人が二度読むより、違う人が一度読むほうが見つかります。
記録を残す
何をどこまで確かめたかを書いておきます。
数値の出どころ、確認した日、参照した資料。これが書いてあれば、後から誰かが検証できる。
書けない数字は、そもそも載せない。この基準にしておくと、確かめる範囲が自然に決まります。出典を書く前提で調べると、調べ方そのものも変わってきます。
確かめられない答えの扱い
調べても裏が取れないことがあります。
そのときは、使わないのが原則です。「たぶん合っている」で資料に載せると、後から質問されて答えられません。
どうしても必要なら、確かめられていないことを明記して載せる。読む側が扱いを判断できます。黙って混ぜるのがいちばん悪い。
空欄のまま出すのは、格好が悪いだけで事故にはなりません。埋めた数字が間違っているほうが、後の損が大きい。
「ここは確かめられなかった」と言える人のほうが、結果的に信用されます。全部を埋めてくる資料のほうが、実は危うい。
出典
推測が起きやすい構造については下記に基づきます。

