仕組みを入れても成果が出ないとき、原因はたいてい道具ではなくデータの側にあります。
散らばった資料を読める形にするまでの手順を見ていきます。
整っていれば効く
大量の情報から候補を絞る作業は、条件が揃えば機械の得意分野です。
公開されている研究用のデータベースが使いやすいのは、置き場が1か所で、形式が決まっていて、項目の意味が定義されているからです。数が多いだけなら問題になりません。
社内の資料が扱いにくいのは、量ではなく状態の問題です。どこにあるか分からない、形式がばらばら、同じものが何世代も並んでいる。この3つが揃うと手が出せません。
先に片付ける4つ
| やること | 放置するとどうなるか |
|---|---|
| 置き場を1つに決める | 探せない資料は無いのと同じ |
| 最新版を1つに絞る | 古い規程を根拠に案内してしまう |
| 画像だけの資料を文字にする | 読み取れないので存在しない扱いになる |
| 公開してよい範囲を分ける | 見せてはいけない情報が混ざる |
2番目が厄介です。「最終版」「最終版_修正」「最終版_修正2」。人なら日付で見当がつきますが、機械は区別しません。どれが生きているかを決める作業は、人がやるしかない領域です。
読み取れない形
中身が文字として取り出せるかを確かめます。
紙をそのまま画像にしたPDFは、文字が入っていません。表として組まれていない数字の羅列も、意味が取れない形です。結合されたセルが多い表も崩れます。
文字起こしをかければ画像からでも読めますが、精度は完全ではありません。金額や日付が化ける前提で、重要な資料は作り直すほうが確実です。
確かめ方は簡単で、そのファイルから文字をコピーできるかを見ればよい。できなければ画像です。古い契約書や手書きの記録に多い形です。
全部を入れない
社内の全文書を対象にすると、かえって精度が落ちます。
古い規程、個人の下書き、途中で止まった企画。これらが混ざると、どれを根拠にしたか分からない答えが返ってきます。
最初は範囲を絞りたい。よく聞かれる質問に答えられる資料だけを対象にする。20件から始めて、答えられない質問が出たら足していく形が現実的です。
見せてよい範囲も、ここで分けます。人事や給与の情報が同じ場所にあるなら、先に切り離す。後から絞るより、最初から入れないほうが確実です。
言葉を揃える
同じものが違う名前で書かれている状態は、精度を落とします。
正式名称、略称、部署ごとの呼び方。人なら文脈で分かりますが、検索して渡す仕組みでは別物として扱われることがある。「有給」と「年次有給休暇」で結果が変わるなら、揃える価値があります。
全部を書き換える必要はありません。言い換えの一覧を作って、質問の側を広げる形でも効きます。この一覧は乗り換えても使えるので、手元に残しておきたい資産です。
更新の担当を決める
作った直後がいちばん正確で、あとは劣化していきます。
制度が変わったときに誰が差し替えるか。決まっていないと、誰も直しません。古い内容を自動で配り続ける状態は、無いよりたちが悪い。
各資料に最終確認日を書いておき、一定期間を過ぎたものを洗い出す仕組みにすると腐りにくくなります。
出典を返させる
答えだけを返す形にしないこと。
どの資料の、どの部分を根拠にしたか。これが一緒に出れば、正しいかを確かめられます。出典が示せない仕組みは、業務では使いにくい。
学習させて覚えさせるのではなく、検索して渡す形にするのはこのためです。中身を覚えさせると、出どころを示せなくなります。
効果の測り方
利用回数ではなく、答えられなかった質問を見ます。
そこが資料の穴です。埋めていけば、対応できる範囲が広がる。回数を目標にすると、使う必要のない場面でも使われるようになります。
準備の工程がいちばん地味で、いちばん効きます。道具を入れ替えても、ここが整っていなければ結果は変わりません。
どこから手を付けるか
全社の整備を待つ必要はありません。
1つの部署、よく聞かれる20件。この範囲なら数日で形になります。効いた形を横に広げるほうが、大きな計画を立てるより速い。
整備そのものにも価値があります。どれが最新かを決め、画像を文字に直し、公開範囲を分ける。この作業は、仕組みを入れるかどうかに関係なく必要だったものです。
出典
検索して答えを返す仕組みと、扱う情報の注意点は下記に基づきます。

