文字起こしの精度は、実用の水準に届きました。
ただし字幕にするには、区切り方と表記の整理が要ります。手順と外れやすい箇所を見ます。
工程は2つに分かれる
音声を文字にする工程と、字幕として整える工程です。
前者は自動でかなりの精度が出ます。後者が手作業の残る部分。1行の長さ、表示のタイミング、改行の位置。ここが雑だと読めない字幕になります。
分けて考えると、どこに時間をかけるべきかが見えます。自動でできる部分に手をかけても、成果は変わりません。
外れやすい箇所
| 種類 | 起きること |
|---|---|
| 固有名詞 | 社名・人名・製品名が別の語になる |
| 専門用語 | 業界特有の言い回しが一般語に置き換わる |
| 数字 | 桁や単位が変わる |
| 同音異義語 | 文脈に合わない漢字が当てられる |
| 複数人の会話 | 話者の切り替わりを取り違える |
固有名詞は、あらかじめ一覧を渡せる仕組みなら渡しておきたい。社名や商品名を先に伝えるだけで、当たる率が変わります。
数字は必ず自分で聞き直す。「15万」が「50万」になっていても、文としては自然に読めてしまう。見つけにくい種類の誤りです。
読める字幕にする
文字起こしをそのまま流すと、読めません。
話し言葉には、言い直しやつなぎの語が大量に入っています。「えー」「あの」「なんか」。文字にすると目立つので、落とす。
1行の長さも決めたい。日本語なら15字前後、2行までが目安です。それを超えると、読み終わる前に次の字幕に切り替わります。
改行の位置も意味の切れ目に合わせる。文節の途中で折れていると読みにくい。「整えて」と頼むだけでは揃わないので、条件を数字で指定します。
タイミングの調整
自動で付いた時刻は、そのままだと早すぎたり遅すぎたりします。
話し始めより少し前に出し、話し終わってから少し残す。この余裕がないと、目で追いつけません。
場面が切り替わるところで字幕をまたがせないのも基本です。編集ソフトで見ながら直すしかない部分ですが、気づくかどうかで仕上がりが変わります。
ファイル形式を知っておく
字幕は、専用の形式で扱うと後が楽です。
開始時刻、終了時刻、文章。この3つが並んだテキストファイルで、多くの編集ソフトや配信サービスが読み込めます。動画に焼き込む前に、この形で作っておきたい。
焼き込んでしまうと、後から直せません。表示のオンオフも選べなくなる。別ファイルにしておけば、翻訳版を足すのも簡単です。
検索に載る点でも別ファイルが有利です。焼き込んだ文字は、機械には読めません。
翻訳字幕を作る
日本語の字幕ができていれば、別の言語へ展開できます。
ただし字幕の翻訳は、文書の翻訳とは違います。長さの制限があるので、意味を保ったまま縮める作業が入る。「この長さ以内で」と条件を付けて頼みたい。
冗談や言葉遊びは、直訳すると意味が消えます。そこだけは人が置き換えるか、諦めて説明的な訳にするかを選ぶ。
誰のために付けるか
字幕は、聞こえにくい人のためだけのものではありません。
音を出せない場所で見る人、日本語が母語でない人、聞き取りにくい環境にいる人。実際には、字幕があるほうが最後まで見られる傾向があります。
聞こえにくい人向けに作るなら、効果音や話者名も入れたい。「(拍手)」「(音楽)」のような表記が要る場面があります。
画面に映っているものを説明する必要が出ることもある。話し言葉だけでは意味が通らない場面では、補足を足します。
文字起こしを別のことにも使う
作ったテキストは、字幕以外にも効きます。
記事に書き起こす、要点をまとめて説明文にする、章ごとの見出しを作る。同じ素材から複数の成果物が出せます。
検索されたい語が話されているかを確かめる用途にも使える。動画の中身をテキストで持っておくと、後から扱いやすくなります。
音声を渡してよいか
録音には、話した人の声と内容が入っています。
社内の会議や顧客との打ち合わせなら、外部サービスに渡す前に確認が要る。参加者に断りなく処理させるのは避けたい。
公開を前提に撮った動画なら、この問題は起きません。用途で扱いを分けるのが現実的です。
他人が作った動画に字幕を付けて公開するのも、別の話になります。著作物を扱うことになるので、権利者の許諾が要るかどうかを先に確かめたい。
確認にかかる時間を見込む
自動化しても、確認の工程は残ります。
10分の動画なら、聞き直しと整形で30分から1時間。慣れれば短くなりますが、ゼロにはなりません。全部が自動で終わる前提で予定を組むと、公開が遅れます。
量が多いなら、確認の濃さを変える手もある。社内向けは軽く、公開するものは厳しく。一律にしないほうが回ります。
出典
字幕の要件と、音声の扱いについては下記に基づきます。

