AIで作った画像や文章に、著作権はあるのでしょうか。
答えは「場合による」です。ただ、その分かれ目は思ったよりはっきりしています。文化庁が判断要素を具体的に並べているからです。
まず著作物の定義を見る
著作権法は、著作物をこう定義しています(第2条第1項第1号)。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
4つの条件に分かれます。①思想又は感情を、②創作的に、③表現したものであって、④文芸・学術・美術・音楽の範囲に属する。
問題は①と②です。AIが出したものは、誰の思想や感情を表現したことになるのか。
ボタンを押しただけのものは著作物ではない
文化庁の見解は明快です。
人が何も指示を与えず、あるいは簡単な指示を与えるにとどまり、「生成」のボタンを押すだけでAIが出したもの。これは「思想又は感情を創作的に表現したもの」に当たらず、著作物ではないとされています。
つまり保護されない。誰かが勝手に使っても、著作権を根拠に止めることはできません。
一方で、人が思想や感情を表現するための「道具」としてAIを使ったと認められる場合。こちらは著作物に当たり、AIを使った人が著作者になります。
ちなみにAI自身が著作者になることはありません。著作者になれるのは人、つまり自然人か法人だけだからです。
分かれ目は「創作意図」と「創作的寄与」
道具として使ったと言えるかどうかは、2つの点で判断されます。人に創作意図があったか。そして、創作的寄与と認められる行為をしたか。
ここで肝心なのは、単なる労力は創作的寄与に数えられないという点です。手間をかけたかどうかではありません。
4つの判断要素
文化庁は、創作的寄与があるかどうかを見るときの具体的な要素を挙げています。ここが実務でいちばん効く部分でしょう。
| 要素 | 文化庁の整理 |
|---|---|
| 指示・入力の分量 | 「創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示」は、創作的寄与ありと評価される可能性を高める。ただし長いプロンプトでも、アイデアを示すにとどまるなら判断に影響しない |
| 生成の試行回数 | 回数が多いこと自体は影響しない。生成物を確認しながら指示を修正して繰り返した場合は、認められることもある |
| 複数からの選択 | 単に選ぶ行為だけでは影響しない |
| 加筆・修正 | 創作的表現といえる加筆・修正を加えた場合、通常その部分には著作物性が認められる |
よく誤解されるのが2番目と3番目です。
「500回回して選び抜いた1枚だから、自分の作品だ」。この主張は、そのままでは通りません。回数も選択も、それだけでは創作的寄与に数えられないからです。
効くのは、指示の中身と、後から手を入れたかどうか。プロンプトが長いことではなく、そこに具体的な表現が書かれているかが見られます。「かっこいい猫」は何回書いてもアイデアどまり。
なお、AI生成物であることをもって一律に著作物かどうかが決まるわけではない、とも明記されています。個々の生成物ごとに、事情に応じて判断されます。
著作物になるかと、侵害になるかは別の話
混同しやすいので分けておきます。
生成物が著作物として保護されるかという問題と、その生成物が他人の著作権を侵害するかという問題は、まったく別です。自分の生成物に著作権が認められた場合でも、それが既存の作品を侵害していることはあり得ます。
侵害の判断に必要なのは2つ。類似性と依拠性です。
類似性は、既存の著作物と創作的表現が共通していること。依拠性は、既存の著作物をもとに作ったことです。両方そろい、権利制限規定にも当てはまらなければ侵害になります。
依拠性は「知らなかった」で逃げられない
依拠性については、AI特有の整理があります。ここは押さえておいたほうがいい。
学習データにその作品が入っていたことが立証できる場合、AIを使った人がその作品を知らなくても、通常は依拠性があったと推認されます。「元ネタを知りませんでした」という主張は効きにくいということ。
学習データに入っているかどうか分からない場合でも、権利者側が「利用者がその作品にアクセスできた」「生成物との類似性が高い」といった事情を立証すれば、依拠性が推認され得るとされています。
反論の余地がないわけではありません。そのAIについて「学習に使われた著作物の創作的表現が、生成・利用の段階で出力される状態になっていない」ことを利用者が主張・立証できれば、依拠性なしと判断される場合もあるとされています。ただ、個人がこれを立証するのは相当難しいはずです。
生成できたことと、使えることは違う
もうひとつ、見落としやすい点。
生成する行為が適法だったとしても、その生成物をSNSに上げたり複製物を売ったりする行為まで自動的に適法になるわけではありません。場面ごとに判断が要ります。
個人的に生成して自分で眺めるだけなら、私的使用のための複製として権利制限の対象になり得ます。それを公開した瞬間に、話が変わる。
実務でどう構えるか
仕事でAI生成物を使うなら、押さえどころは3つでしょう。
生成物に著作権を主張したいなら、指示の中身を具体的に書き、生成後に自分で手を入れる。そしてその過程を記録に残しておく。ボタンを押しただけの素材は、誰でも自由に使える状態にあります。
公開前に、既存の作品と似ていないか確認する工程を挟む。特定の作家やキャラクターを狙って生成したものは危険度が高い。
そして、生成と公開を別の判断として扱う。社内で試すぶんには問題なかったものが、外に出した途端に問題になることがあります。
この記事は条文と公式資料の一般的な説明にとどまります。個別の案件について結論を出すものではありません。判断に迷う具体的な事案は、弁護士に相談してください。
出典
条文は e-Gov 法令検索に掲載されている著作権法の本文を引用しています。判断要素と依拠性の整理は、文化審議会著作権分科会法制度小委員会が取りまとめた資料の記述に基づきます。

