AIエージェントを自前で組んだことがある人なら、たぶん同じところで疲れています。会話が長くなると文脈があふれる。ツールが増えるとプロンプトが膨らむ。途中で落ちたら最初からやり直し。モデルより、その周りの仕組みづくりに時間が消えていく。
OpenAIの「Agents API」は、その周りの部分をまるごと貸し出すAPIです。2026年9月10日にパブリックベータとして出て、9月29日のDevDayでブラウザを操作する機能(computer use)が加わりました。公式の発表とドキュメントを読んで、何を任せられて、いくらかかって、どこに注意がいるのかを整理します。
Agents APIとは何か
Codexを動かしているのと同じ「ハーネス」を、APIとして使えるようにしたものです。ハーネスというのは、モデルの呼び出し、ツールの実行、文脈の管理、サブエージェントへの振り分けをまとめて面倒を見る部分のこと。
開発者は、使うモデル・ツール・実行環境・最初の指示を決めてAPIを1回呼ぶ。あとはOpenAIが「セッション」としてエージェントを動かし続け、進み具合をイベントで返してくる。そういう形です。
公式の説明で任せられるとされているのは次のあたり。
- サンドボックスの中でのコマンド実行、ファイル編集、成果物づくり
- 文脈が上限に近づいたときの自動要約(コンパクション)
- 必要なときだけツール定義を読み込む「ツール検索」
- サブエージェントへの分担。同時に動かす数を指定できる
- MCPサーバー、自作の関数、ウェブ検索などのツール接続
- 途中で落ちたセッションの再開
ハーネスの中身はオープンソースのCodexと同じなので、コードを読めば何をしているかは確かめられます。動かすのはOpenAI側、という分担。
発表には導入企業の声も載っていて、Ciridaeという会社は評価スコアが0.71から0.85に上がり、待ち時間が4分の1になったと話しています。自社の評価なので、そのまま一般化はできません。
DevDayで加わったブラウザ操作
9月29日の追加がcomputer useです。OpenAIが用意したブラウザの中で、エージェントがサイトを開き、画面を見て、クリックや入力をする。ウェブサイトのテスト、情報集め、APIのないサービスを画面から操作する、といった用途が想定されています。
ドキュメントを読んで、いちばん意外だったのが許可の細かさでした。
エージェントが新しいサイト(オリジン)を開こうとするたびに、アプリ側に承認の依頼が届く。公開されている普通のサイトでも同じです。ネットワーク接続を有効にしていても、それだけでは承認したことにならない。開発者は依頼ごとに「許可」「拒否」「取り消し」を返す作りにする必要があります。
この承認が見ているのは「そのサイトに入ってよいか」だけ。サイトに入ったあとの個々のクリックや送信を、1回ずつ確認する仕組みではないとドキュメントに明記されています。ここは誤解しやすいところです。
ログインはアプリ側で受け持つ
社内のGitHubを読ませるような、ログインが要る作業にも対応しています。エージェントが認証を求めると、アプリ側にログイン方法と入力欄の情報が届き、利用者はチャットの外で認証情報を入れる。モデルの会話に直接パスワードを書かせない設計です。
対応しているのはメールアドレス、パスワード、確認コード。パスキーとQRコードでのログインには対応していません。ログインを求められるのはメインのエージェントだけで、サブエージェントはできない決まりです。
画面のスクリーンショットは、既定ではAPIの出力に含まれない。含めたいときは設定で有効にします。スクリーンショットには画面上の個人情報がそのまま写るので、見せる相手を絞り、ログに残さないように、とドキュメントも注意していました。
料金は3つの足し算
Agents APIそのものに追加料金はかかりません。払うのは次の3つです。
| 項目 | 単価 | 円換算 |
|---|---|---|
| GPT-6 Astra(入力/出力) | 100万トークンあたり10ドル/50ドル | 約1,571円/約7,856円 |
| GPT-6.1 Sol(入力/出力) | 100万トークンあたり2ドル/10ドル | 約314円/約1,571円 |
| GPT-6 Luna(入力/出力) | 100万トークンあたり0.10ドル/0.50ドル | 約16円/約79円 |
| OpenAIのサンドボックス(4GB) | 20分あたり0.12ドル | 約19円 |
| OpenAIのサンドボックス(64GB) | 20分あたり1.92ドル | 約302円 |
| ウェブ検索などのツール | 各ツールの標準単価 | — |
サンドボックスは「コンテナ」の料金で、1GBなら20分0.03ドルから。対象のセッションは分単位の課金で、最低5分ぶんはかかります。
ブラウザ操作に独自の単価があるのかどうかは、9月30日時点の料金ページでは読み取れませんでした。画面を見るたびにスクリーンショットをモデルが読むので、そのぶんの入力トークンは増えるはずです。どのくらい増えるかは、実際に回して請求を見るしかない。
費用がふくらみやすいのは、モデル選びよりも「止めどころ」だと思っています。イベントの受信を切ってもタスクは止まらない、とドキュメントに書かれていて、止めるには明示的に取り消す必要がある。エージェントを走らせっぱなしにしない作りは、自分で入れておくことになります。料金表の読み方はAIのAPI料金表の読み方で、月ごとの管理はAIの費用を月ごとに管理するで書きました。
実行環境は3通りから選ぶ
| 環境 | 中身 |
|---|---|
| OpenAIのサンドボックス | CodexやChatGPTと同じ基盤。OpenAIが用意と管理をする。ブラウザ操作はここで動く |
| 自前のインフラ | 自社の環境でエージェントのコマンドを実行する |
| 提携サンドボックス | Blaxel、Cloudflare、Daytona、DigitalOcean、E2B、Modal、Oracle、Runloop、Vercelなど |
AWSを使っている会社向けには、Agents APIの上に作られた「Amazon Bedrock Managed Agents for OpenAI」もDevDayで発表されています。
日本で使うときの注意点
ここは導入前に読んでおいたほうがいい部分です。
Agents APIのデータ保管地域は、今のところ米国だけ。データを保持しない設定(ZDR)にも対応していません。自前のサンドボックスを選んでもZDRの対象にはならない、とわざわざ書かれています。セッションの状態はOpenAI側に残る設計で、要らなくなったら削除する、という運用です。
社内規程で「データは国内」「提供元に残さない」と決めている会社だと、この時点で使えないかもしれません。何を入れてよいかの考え方はAIに個人情報を入れてよいかにまとめています。
権限の渡し方も考えどころ。サイトごとの承認があるとはいえ、一度許したサイトの中での操作は止めない仕組みです。DevDayの前日、OpenAIは学習中のモデルがオーストラリアの政府システムに無断で入り込んでいた件を公表していました。公開中の製品ではなく社内の実験モデルの話ですが、エージェントは目的のために思わぬ道を選ぶことがある、という例ではあります。AIに権限を渡しすぎないで書いた原則は、ブラウザ操作でも変わりません。
Pro 500でもChatGPTから使える
APIを書かない人にも関係があります。月500ドルのChatGPT Proと、対象のEnterpriseの顧客は、CodexとChatGPT WorkからAgents APIのパソコン操作を使える、と発表されました。
エージェントを並べて動かす考え方はAIエージェントとはで、MCPの仕組みはMCPとはで整理しています。Agents APIはこのふたつを、OpenAIのインフラの上でまとめて動かすもの、と捉えるのが近いかもしれません。
自前で組んだハーネスを捨ててこちらに乗り換えるかは、正直まだ決めかねます。楽になるのは確かでも、データの置き場所と、ハーネスの挙動をOpenAIの更新に委ねることになる。そこをどう見るか次第です。
出典
すべて2026年9月30日に確認したものです。
- Agents API のご紹介(OpenAI・2026年9月10日)
- Agents API overview(OpenAI API ドキュメント)
- Computer use(OpenAI API ドキュメント)
- Pricing(OpenAI API)
- DevDay 2026 の振り返り(OpenAI・2026年9月29日)
為替は1ドル157.12円(2026年9月30日時点)で換算しています。

