導入したあと、実際に使われているかを確かめる手立てがログです。
何を見れば運用の改善につながるのか。逆に見てはいけないものは何か。整理します。
まず見るのは使われ方の分布
全社の利用回数より、誰が使っているかの分布のほうが役に立ちます。
上位の数人が全体の大半を占めている、という形になりがちです。この形が見えたら、次にやることは決まっている。使っている人の使い方を、使っていない人に渡す。
部署ごとの差も出ます。同じ職種で差が出ているなら、道具の問題ではなく、きっかけの問題であることが多い。
見るべき指標
| 指標 | 分かること |
|---|---|
| 週に一度以上使った人の割合 | 定着したかどうか |
| 一人あたりの会話数 | 試しただけか、業務に入ったか |
| 会話あたりの往復数 | 一往復で終わる使い方が多いと浅い |
| 部署別の利用率 | 展開が偏っていないか |
| 導入からの推移 | 初月だけ伸びて落ちていないか |
往復数は見落とされやすい指標です。一往復で終わっているなら、検索の代わりに使われている。何度もやりとりしているなら、作業に組み込まれている。
中身は見ない
管理者の権限で会話の中身を閲覧できるサービスがあります。
見られると分かった時点で、使われなくなる。これが実務上のいちばん大きな理由です。安心して試せる場でなくなると、誰も踏み込んだ使い方をしなくなります。
個人情報保護の面でも慎重に扱いたい領域です。従業員の入力内容には、業務と無関係の記述が混ざることがある。
中身を見る必要が生じるのは、事故が起きたときだけです。そのときの手順と権限を先に決めておき、平時は見ない。この線を最初に引いておくと、後から揉めません。
事故の兆候として見るもの
中身を読まなくても、危ない使い方の兆候は拾えます。
極端に長い入力が繰り返されている。添付ファイルの数が突出している。深夜帯だけ利用が集中している。こうした形は、規約や社内ルールから外れた使い方の合図になることがある。
兆候が出たときの対応は、いきなり個人を特定する方向ではなく、まずルールの周知から始めたい。多くの場合、悪意ではなく知らないだけです。
何を集めるかを先に決める
ログは、取れるものを全部取ると使えなくなります。
先に問いを決めておきたい。「定着したか」「偏っていないか」「危ない使い方が出ていないか」。この3つに答えられる項目だけ残せば、毎月の確認が10分で終わります。
保存期間も決めておく。無期限に持つ理由がある項目は多くありません。必要な期間を過ぎたら消える設計にしておくほうが、管理する側も楽になる。
従業員に何を伝えるか
取得していること自体は、先に伝えます。
何を取っていて、何を取っていないか。誰が見られて、どんなときに見るのか。この3点を書いた文書を配っておくと、あとから不信が生まれにくい。
黙って取って、必要になったときに開示する形がいちばん揉めます。取ること自体より、知らされていなかったことのほうが問題として残るからです。
ログでは分からないこと
効果の測定には向きません。
利用回数が増えても、仕事が速くなったかは別の話です。時間が浮いたかどうかは、業務側の記録と突き合わせないと出ない。
回数を目標にすると、回数だけが増えます。使う必要のない場面で使うようになり、確認の手間が増えて全体では遅くなることさえある。
測るなら、対象の業務を絞って前後を比べるほうが確実です。「見積書の作成にかかった時間」のように、範囲を狭くとる。
数字が動かないとき
半年たっても利用率が上がらない場合があります。
研修を増やしても動かないなら、原因は知識ではありません。使う場面が業務の中にない。あるいは、使ってよいかが曖昧で踏み出せていない。
後者は解消できます。入力してよい情報の範囲を、具体例つきで一枚にまとめて配る。禁止事項の列挙より、許可されている例を挙げるほうが効きます。
見た結果をどう使うか
数字を眺めて終わらせないための一手があります。
使っている人に、何に使っているかを聞く。ログには出ない部分がここで出ます。定型の報告書、翻訳の下訳、議事録の整理。具体名が挙がったら、それをそのまま他の人に配る。
数字は場所を教えてくれるだけで、中身は人から聞くしかない。ログの役割はそこまでだと考えておくと、扱いを誤りません。
聞くのは月に一度で足ります。数人でよい。同じ質問を続けていると、社内で何が定着しつつあるかが見えてきます。
出典
運用上の注意点は下記に基づきます。

