関数を書かせる、表記を揃える、集計の方針を相談する。
表計算まわりは効きやすい領域です。ただし計算そのものは任せられません。
計算をさせない
最初に押さえるのがここです。
数値を並べて「合計は」と聞くと、答えは返ってきます。ただしそれは計算した結果ではなく、それらしい数を生成したものかもしれない。桁が増えるほど外れます。
やらせるべきは、計算を実行する式を書くこと。答えではなく、答えを出す手順を受け取る。この違いが大きい。
式なら検証できます。セルに入れて、想定どおりの数が出るかを見ればよい。間違っていれば、たいていエラーか明らかに変な値になるので気づけます。
関数を書かせる
いちばん実用になる使い方です。
「A列の日付が今月で、C列が空欄でない行の、E列の合計」と日本語で書けば、式が返ってきます。関数名を覚えていなくてよい。
エラーが出たときも、式を貼って「なぜこのエラーになるか」と聞ける。原因の見当がつけば、直すのは早い。参照範囲のずれや、型の食い違いが多い。
使っているソフトを伝えるのを忘れずに。表計算ソフトによって、使える関数も区切り文字も違います。日本語版か英語版かでも関数名が変わることがある。
向き不向き
| 作業 | 任せるか |
|---|---|
| 関数・数式を書く | 任せる |
| エラーの原因を探す | 任せる |
| 表記ゆれを見つける | 任せる |
| 集計の切り口を相談する | 任せる |
| 数値を計算する | 任せない |
| 大量データの並べ替え | 任せない |
並べ替えや抽出を頼むと、途中の行が抜けることがあります。件数が多いほど起きやすい。件数を数えて確かめる習慣が要ります。
表記のゆれを見つける
機械的な照合より、こちらのほうが得意です。
「株式会社A」と「(株)A」と「A株式会社」。完全一致では別物ですが、同じ会社だと分かります。この判断は人がやると時間がかかる。
列を渡して「同一と思われるものをまとめて」と頼む。返ってきた候補を自分で確認し、置換の対応表を作る。置換自体は表計算ソフトの機能でやります。
住所や部署名でも同じ手が使えます。名寄せの前段として、候補を絞る作業に向いています。
マクロと自動化
繰り返しの手作業は、コードにしてしまう手があります。
「毎月このファイルを開いて、この列で並べ替えて、この形式で保存する」。手順を日本語で書けば、マクロとして返ってきます。
試すときは、必ず複製したファイルで動かしてください。元のファイルで実行して、戻せない状態になる事故が起きます。
意味が分からないコードを本番で走らせないこと。何をしているか1行ずつ説明させてから使えば、危ない処理に気づけます。
分析の相談相手にする
数字を見る前に、何を見るかを決める工程で効きます。
列の名前だけ渡して「このデータから何が言えそうか、切り口を挙げて」と聞く。自分の見たい軸しか見ていなかったことに気づけます。
結果の解釈を相談するのも有効です。ただし「なぜこうなったか」の説明は仮説として扱いたい。データに出ていない因果を、もっともらしく語ることがあります。
確かめる方法とセットで聞くと使えます。「その仮説が正しいなら、どの数字がどうなっているはずか」。検証できる形に落とせば、仮説のまま資料に載る事故を防げます。
壊れたデータを直す
他部署から来るファイルは、たいてい形が整っていません。
見出しが2行に分かれている。結合セルが混ざっている。日付が文字列と数値で混在している。こうした状態を直す手順は、説明すれば返ってきます。
直し方を教わって自分で実行する形が安全です。修正済みのデータを出力させると、途中で値が変わっていても気づけません。
直したあとは件数と合計を照合する。元と合わなければ、どこかで行が落ちています。
渡し方
全行を貼る必要はありません。
列の名前と、代表的な数行。これだけで式は書けます。全部渡すと、費用がかさむうえに精度も上がりません。
顧客名簿や売上明細をそのまま貼るのは避けたい。個人情報や取引条件が含まれる場合、入力してよいかの確認が先です。
列名だけなら、たいてい問題になりません。中身を伏せても、作業は進みます。
表計算ソフト自体にAI機能が組み込まれている場合は、話が別です。シート全体が参照される設定になっていることがあるので、扱う情報の範囲を先に確かめておきたい。
出典
計算を任せられない理由は、下記の性質に由来します。

