請求書から日付と金額と取引先を抜き出す。1件あたり数秒の作業でも、1万件あると話が変わります。
OpenAIが2026年10月2日に公開した「GPT-6 ファミリーのモデルガイド」は、こういう仕事にどのモデルを当てるかを、珍しくはっきり書いていました。答えは、いちばん安いGPT-6 Luna。最上位のGPT-6 Astraではありません。
ガイドの中身と、APIの料金表、各モデルの仕様ページを突き合わせて、3つのモデルの使い分けを整理しておきます。
GPT-6 ファミリーの3モデルと使い分け
ガイドが示している分け方は、次のとおりです。
| モデル | ガイドが挙げる用途 |
|---|---|
| GPT-6 Astra | 最大限の知的能力が要る、最も難しい推論 |
| GPT-6.1 Sol | 複雑なコーディング、調査、コンピューター操作 |
| GPT-6 Luna | 請求書の項目抽出、問い合わせの分類、決まった形の要約などの大量処理 |
Lunaの説明は具体的で、請求書・分類・要約と、事務の現場でそのまま思い浮かぶ例が並んでいました。目的がはっきりしていて、毎回同じ形で答えればいい仕事。そこに高いモデルを使う理由はない、という立場です。
ガイドはモデル選びを「知的能力と価格のトレードオフ」と表現しています。一番賢いものを選べば安心、という考え方とは距離がある。モデルを1つに絞らないで書いた使い分けの話を、開発元が公式に後押しした形にも見えます。
料金はどれくらい違うのか
| 100万トークンあたり | GPT-6 Astra | GPT-6.1 Sol | GPT-6 Luna |
|---|---|---|---|
| 入力 | 10.00ドル | 2.00ドル | 0.10ドル |
| キャッシュ済み入力 | 1.00ドル | 0.10ドル | 0.01ドル |
| 出力 | 50.00ドル | 10.00ドル | 0.50ドル |
AstraとLunaは、入力も出力も100倍の差。円にすると、Lunaの出力は100万トークンで約79円です。1ドル157.67円で計算しました。
桁が2つ違うと、比べ方の感覚が変わります。具体的な仕事で計算してみました。
請求書1万件で試算する
1件あたり、請求書の文字起こしと指示を合わせて入力3,000トークン、抜き出した項目の出力を500トークンと置きます。この数字は自分で決めた仮の値で、実際の請求書の長さで上下します。

Astraなら約8万7,000円、Lunaなら約870円。急がない仕事なのでBatch(まとめて投げて、あとで結果を受け取る方式)にすれば、さらに半額の約430円です。BatchとFlexが標準の50%になることは、Lunaの仕様ページに明記されていました。
この試算には、モデルが答える前に考える「推論トークン」を入れていません。推論トークンは出力として課金されるので、推論の設定を上げるほど出力が膨らむ。Lunaの推論設定の初期値は「中」でした。抽出のような仕事なら「低」か「none」に下げて、実際のトークン数を測ってから見積もるのが確実でしょう。
料金表の読み方はAIのAPI料金表の読み方に、SolとAstraの細かい単価はGPT-6.1 Solの料金と性能に書いています。
推論の深さは4段階で考える
モデルの次に選ぶのが、推論にかける労力(reasoning effort)です。ガイドの目安はこうでした。
| 設定 | 向いている仕事 |
|---|---|
| 低 | 事実の抽出、小さな編集など定型の作業 |
| 中 | 機能の計画、選択肢の比較など判断が要る作業 |
| 高 | 難しいデバッグ、深い分析、入念なレビュー |
| 超高/マックス | 「高」で足りないときだけ。時間と費用に見合う改善がある場合に限る |
「超高」以上には、わざわざ但し書きがついています。上げれば良くなるとは限らない、ということでしょう。
推論の設定は、会話の途中で変えてもキャッシュが無効にならない、とも書かれていました。最初の数往復は深く考えさせて方針を決め、あとの細かい作業は「低」に落とす。そういう使い方が費用の面で効いてきそうです。推論そのものの仕組みは思考の連鎖とはで扱いました。
速さにお金を払う選択肢
Fastモードは、トークンあたりの単価が標準の2倍になる代わりに、応答が速く安定する。3モデルとも使えます。Ultrafastはさらに上の選択肢で、ガイドの時点で使えるのはAstraだけ。料金表ではAstraのUltrafastは入力60ドル・出力300ドルで、標準の6倍でした。ChatGPT側の話はChatGPT Proの月500ドルプランにまとめています。
Lunaを使う前に確かめたいこと
仕様ページを読んでいて、引っかかった点が2つあります。
1つは、Chat Completions APIで関数呼び出しを使う場合、推論の設定を「none」にしないと使えないこと。ツールを組み合わせたいならResponses APIを使え、という指定です。古いChat Completionsで組んだ仕組みにLunaを差し込むと、ここでつまずくかもしれません。
もう1つは、ファインチューニングに非対応なこと。自社の帳票に合わせて追加学習させる、という道は最初から無い。OpenAIがファインチューニングを畳むで書いた流れと同じで、プロンプトとスキルで寄せていく前提になります。
そのほかの仕様は次のとおり。文脈は105万トークン、出力は最大12万8,000トークン、知識の締め切りは2026年5月18日。画像は入力できますが、音声と動画は扱えません。入力が27万2,000トークンを超えると、そのリクエスト全体が入力2倍・出力1.5倍の単価になる決まりはLunaにもあります。
指示は細かく書かないほうがいい、という話
料金以外で印象に残ったのは、プロンプトの書き方の部分でした。
ガイドには、OpenAIの開発者体験の担当者の言葉として、以前は役立っていた細かすぎる指示が、今はかえって成果を妨げることがある、という趣旨の発言が引かれています。代わりに書くべきだとされているのは4つ。何を作ってほしいか、誰に向けたものか、関係する前提と制約、どうなったら完了か。
AIエージェントに仕事を任せる場面では、さらに踏み込んだ話もありました。「必ず確認する」という一律のルールをやめて、自分で進めてよい操作と承認が要る操作の境界をはっきり書け、というもの。要約の構成は任せても、作業の範囲を変える前には確認させる、という例が挙がっていた。
何でも確認させると、エージェントは止まってばかりで役に立たない。かといって何も確認させないのは怖い。AIに権限を渡しすぎないで書いたように、境界を先に決めておくのが現実的だと思います。
コンピューター操作については、APIや接続済みのツールで済むならそちらを使い、画面を操作するのは他に手がないときだけ、という順番が示されていました。画面操作は遅くて費用もかさむので、納得できる順番です。仕組みはOpenAI Agents APIとはで整理しています。
結局どれを選ぶか
ガイドの言い分を自分なりにまとめると、こうなります。まずLunaで試し、足りなければSol、それでも足りない難問だけAstra。逆向きに、Astraから始めて下げていくやり方もありそうですが、費用の差が100倍あると、上から試すだけで予算を使い切りかねない。
ガイドは最後に、本番の前に代表的なタスクを流して、成功率と応答時間、成功した1件あたりの費用を測れ、と書いていました。単価ではなく「成功した1件あたり」。安いモデルで3回やり直すなら、高いモデルで1回のほうが安くつくこともある、という意味に読めます。この数字だけは、自分の仕事で測るしかありません。
月ごとの費用の見方はAIの費用を月ごとに管理するに、トークンの数え方はトークンとはに書いています。
出典
すべて2026年10月3日に確認したものです。円換算はECBが公表する2026年10月2日の参照レート(1ドル157.67円)で計算しました。
- GPT-6 ファミリーのモデルガイド(OpenAI・2026年10月2日)
- Pricing(OpenAI API・料金ページ)
- GPT-6 Luna(OpenAI API・モデル仕様ページ)
- GPT-6.1 Sol(OpenAI API・モデル仕様ページ)
- GPT-6 Astra(OpenAI API・モデル仕様ページ)
- ECB参照レート(Frankfurter API・2026年10月2日)

