AIを採用業務に使う|書類選考に任せてはいけない理由

人を選ぶ仕事 社内での導入と運用

求人票の作成や日程調整は任せられます。

ただし合否の判断は別です。線の引き方を見ていきます。

任せられる作業

作業 任せるか
求人票の文面を作る 任せる
日程調整の連絡 任せる
面接の質問案を出す 任せる
面接メモを整理する 任せる
書類を点数化する 任せない
合否を決める 任せない
準備と整理は任せ、人を選ぶ判断は残す

求人票は効果が出やすい領域です。自社の言葉で書くと内輪の表現になりがちで、外から見て何の仕事か伝わらない。第三者の目で書き直させると、応募が変わることがあります。

選考に使えない理由

過去のデータから学ばせると、過去の偏りを引き継ぎます。

これまで採用してきた人に似た属性が高く評価される。その中に性別や年齢の偏りがあれば、そのまま再現されます。名前や学校名を隠しても、他の項目から相関が拾われる。

問題なのは、なぜ落としたかを説明できないことです。応募者から理由を問われたとき、「機械がそう判断した」では通りません。

法令も関わります。労働施策総合推進法9条は、厚生労働省令で定めるときに、募集および採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならないと定めています。男女雇用機会均等法5条は、募集および採用について性別にかかわりなく均等な機会を与えることを事業主に求めている。

仕組みの内部でこうした属性と相関する要素が効いていた場合、意図がなくても結果として問題になり得ます。差別するつもりがなかった、という説明は、機械が判断していたなら成り立ちません。

応募者のデータの扱い

履歴書は、個人情報のかたまりです。

氏名、生年月日、住所、経歴。外部のサービスに貼り付ける前に、その行為が第三者提供や委託にあたらないかの整理が要ります。

健康状態や信条は、要配慮個人情報として別枠で扱われる情報です。取得の段階から同意が必要とされています。応募書類に書かれていたとしても、扱いは慎重にしたい。

保存期間も決めておく。不採用者の書類を無期限に持つ理由はありません。

面接の準備に使う

ここは実際に効きます。

職務内容を渡して「確かめるべき能力と、それを聞く質問を10個」と頼む。面接官によって聞くことが違う、という問題が減ります。

聞いてはいけない事項の確認にも使える。本籍、家族の職業、思想信条。就職差別につながるとされる質問は、厚生労働省が具体例を示しています。質問案を点検させると、うっかりが防げる。

ただし最終的な確認は、示されている公式の資料で行ってください。

面接後の整理

メモを構造化する作業は向いています。

走り書きを渡して、確かめたかった項目ごとに並べ直させる。何を聞けていないかも見えます。

評価は自分で書く。整理された情報をもとに、人が判断して言葉にする。この工程を飛ばすと、あとで説明できなくなります。

応募者の側も使っている

職務経歴書がきれいに整っているのは、いまや前提です。

文章のうまさで判断する意味は薄くなりました。書かれている中身と、面接で確かめられることに重心が移っている。

課題を出す選考も、同じ理由で見直しが要ります。成果物だけを見るのではなく、なぜその作りにしたかを聞く形にすると、理解の深さが分かります。

説明できる形にしておく

選考の記録は、後から問われる可能性があります。

誰が、どの基準で、何を見て判断したか。この3つが残っていれば、説明できる。機械が出した点数しか残っていないと、答えようがありません。

補助として使う場合も、最終判断をした人の名前と理由を記録する運用にしておきたい。手間に見えますが、事が起きてからでは作れない記録です。

使うなら開示する

選考の過程でAIを使うなら、応募者に伝えておきたい。

後から知られたときの不信のほうが大きい。何にどう使っているか、人が最終判断していることを書いておけば、無用な疑いを避けられます。

海外から応募がある場合は、地域によって開示や説明を求める規制があります。展開先の要件は先に確かめておきたい。

小さく始める

採用は失敗の代償が大きい業務です。

求人票の書き換えから始めるのが安全でしょう。応募数という測りやすい指標があり、外したところで誰も傷つきません。

次に面接の質問設計、その次に記録の整理。人の判断に近づくほど慎重に進める。この順番なら、途中でやめる判断もしやすい。

効率を測るなら、採用までの日数や、面接官の準備時間を見たい。応募者を減らすことが目的ではありません。

出典

条文と指針は下記に基づきます。実際の運用は社会保険労務士にご確認ください。

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