議事録をAIで作る|録音から配れる形にするまでの手順

録音から議事録へ 仕事での使い方

会議の録音をAIに渡せば議事録ができる。そう思って試すと、たいてい期待外れになります。

文字起こしと議事録は別の作業だからです。工程を分けて考えると、どこで手を入れればよいかが見えてきます。

工程は3つに分かれる

工程 やること つまずくところ
文字起こし 音声を文字にする 固有名詞、社内用語、話者の区別
整理 決まったこと・宿題・論点を抜き出す 言っていないことを補われる
整形 配れる形に整える 体裁が毎回変わる
1つのお願いでまとめてやらせると、どこで狂ったか分からなくなる

最初から3つ全部を一度に頼むと、出来が悪かったときに原因が特定できません。分けて回すほうが結局は速い。

文字起こしでずれるところ

いちばん多いのが固有名詞です。人名、取引先の社名、製品名。音は拾えていても、当てる漢字や表記が違う。

対処は、事前に一覧を渡すこと。参加者の名前と、会議で出そうな固有名詞を並べて添えます。これだけで精度がだいぶ変わります。

話者の区別も苦手な領域です。複数人が同時に話す場面、相槌の多い会議では、発言の帰属が入れ替わることがある。誰が言ったかが重要な会議なら、ここは目で確かめたほうがよいでしょう。

録音の質そのものも効きます。マイクから遠い声、空調の音。改善できるなら、後の工程を直すより録り方を変えたほうが早い。

整理の段階で補われる

ここがいちばん危ない工程です。

会議では、結論が曖昧なまま終わることがよくあります。「じゃあそのへんは追って」で流れた話。ところが議事録として整理させると、それらしい結論が書かれて出てくることがある。

言語モデルは、確信のないときに黙るより推測して答えるほうに寄っています。OpenAIの研究者らが公開した論文は、その理由を評価の採点方法に求めました。誤りも「分かりません」も同じ0点なら、当てずっぽうが得になる。

議事録でこれが起きると、決まっていないことが決まったことになります。実害が出る種類の誤りです。

対処は指示の一文です。「発言されていないことは書かないでください。結論が出ていない議題は、未決と書いてください」。これを添えるだけで、勝手な補完がかなり減ります。

抜き出す項目を先に決める

「要約して」では、何が重要かの判断を任せることになります。

項目を指定したほうが確実です。決定事項、宿題と担当と期限、未決の論点、次回の予定。この4つを埋めさせる形にすると、探しに行くようになります。

宿題については、担当者と期限をセットで抜かせるのが肝心。誰がいつまでにやるのかが書かれていない議事録は、読み返しても動けません。

該当する発言がなければ「なし」と書かせる。空欄を埋めるために作文が始まるのを防げます。

長い会議の扱い

2時間を超える会議は、そのまま渡すと中盤が雑になります。

長い入力では、必要な情報が真ん中にあるときの正答率が落ちる。この性質は実験で確かめられていて、冒頭と末尾は拾えるのに中盤が抜けるという形で現れます。

議題ごとに区切って処理し、最後にまとめる。手間は増えますが、抜けは減ります。

録音してよいかを先に決める

技術以前の話として、ここを飛ばさないほうがよいでしょう。

社外の人が入る会議では、録音の可否を冒頭で確認します。そのうえで、録音データをどこに送るかも問題になる。文字起こしのサービスに音声を渡すということは、その会社のサーバーに会議の中身を預けるということです。

取引先の名前や、未公開の数字が出る会議なら、どのサービスを使ってよいかは事前に決めておくべき項目になります。学習に使われるかどうかも、規約によって違います。

便利さが先に立つと、この確認が後回しになりがちです。

定例会議なら型を作る

同じ会議を毎週やるなら、指示を使い回す形にすると楽になります。

参加者の名前、よく出る固有名詞、抜き出す項目、体裁の指定。この4つをまとめた指示文をひとつ作っておく。毎回それを頭に付けて渡すだけになります。

前回の議事録も一緒に渡すと、継続している議題を追いやすい。「前回の宿題がどうなったか」を拾わせることもできます。

型が固まってくると、確認する箇所も絞れてきます。毎回どこが間違いやすいかが分かるからです。

配る前に確かめること

全文を読み直す必要はありません。見るところは決まっています。

日付と金額。桁の取り違えが起きます。人名と社名の表記。決定事項として書かれた項目が、本当に決まったことか。この3点を確かめれば、大きな事故は防げます。

議事録は後から証拠として使われることがあります。速く作れるようになったぶん、確認の工程は残しておいたほうが安全でしょう。

出典

推測が起きやすい理由と、長い入力での正答率の変化については、下記の論文に基づきます。

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