写真の一部だけを直す、背景を差し替える、写り込んだものを消す。AIの画像編集は実用の域に入りました。
ただし、うまくいく修正と崩れる修正がはっきり分かれます。
得意な修正
周りから推測できるものを埋める作業です。
背景に写り込んだ人や物を消す。空の一部を広げる。壁の汚れを取る。周囲の模様や色から続きを作れる場合、自然に仕上がります。
全体の雰囲気を変えるのも得意です。時間帯を夕方にする、季節を冬にする、色調を落ち着かせる。細部の正確さが問われない変更だからでしょう。
苦手な修正
正解が決まっているものです。
文字。看板の文字を書き換える、商品名を直す。文字らしい模様は作れても、正しい綴りである必要を理解していません。日本語なら特に崩れます。
手と指。本数や関節の位置に決まりがあるのに、数えながら描いているわけではない。それらしい形が浮かべばそこで止まります。
既存の製品の形。実在する商品を正確に再現させると、細部が別物になります。
なぜこの差が出るのか
画像生成の仕組みから説明がつきます。
拡散という方式では、ノイズから少しずつノイズを取り除いて絵を浮かび上がらせます。処理は画像全体で同時に進み、規則を数えながら描いてはいません。
周りから推測できるものは、そのまま浮かんできます。一方、正解が決まっているものは、それらしい形で止まってしまう。
この性質は改善が進んでいますが、根本は変わっていません。
部分修正のコツ
範囲を指定できるサービスなら、直す場所を狭く取ります。
広く取ると、直してほしくない部分まで作り直されます。ぎりぎりまで絞って、周囲を少しだけ含める程度がよい。
指示は、変える部分と変えない部分の両方を書きます。「この人物を消して、背景の壁と床はそのまま」。何を保つかを明示すると、勝手な変更が減ります。
一度で決めようとせず、小さく分けて何度も直すほうが結果は安定します。
元画像の質が結果を決める
編集の成否は、渡す写真の状態でかなり決まります。
明るく、ぶれておらず、直したい部分がはっきり写っている。この条件が揃っていると、修正も自然になじみます。
逆に、暗い写真や解像度の低い画像では、周囲から推測できる情報が少ないぶん、埋めた部分が浮きます。撮り直せるなら、編集で粘るより撮り直したほうが早い。
圧縮を繰り返した画像も不利です。何度も保存し直したファイルより、元のデータを使ったほうが結果が良くなります。
全体を作り直させない
「この写真をきれいにして」と丸ごと任せると、別の写真になって返ってくることがあります。
顔の造作がわずかに変わる、服の柄が違う、背景の物が入れ替わる。読んで気づくのは難しく、元と並べて初めて分かる程度の差です。
人物が写っているなら、この点は特に注意が要ります。本人の写真ではなくなっている可能性があるからです。
直す範囲を指定できるなら、必ず指定する。全体を渡すのは、雰囲気を変えたい場合だけにとどめます。
確認する箇所
仕上がりを見るとき、目を向ける場所は決まっています。
直した部分の境目。周囲との明るさや粒状感がずれていることがあります。
影と反射。物を消したのに影が残っている、窓に映り込んだ像が合っていない。ここは見落としやすい。
直線と垂直。建物の柱や机の縁が、わずかに曲がることがあります。
仕事で使うときの注意
報道や記録の写真では、加工そのものが問題になります。
商品の写真も、実物と違う印象を与える加工は表示の面で危うい。色や質感を実際より良く見せると、別の問題になり得ます。
人物が写っている写真は、本人の許可も要ります。表情や体型を変える加工は、特に慎重に扱うべきでしょう。
生成や編集を経た画像には、来歴の情報や目に見えない印が入る場合があります。加工したことを隠せる前提では考えないほうが安全です。
加工したことを記録する
仕事で使うなら、どの画像にどんな加工をしたかを残しておきます。
元のファイルと、加工後のファイルを両方保管する。どこを直したかも一言残しておく。
後から問い合わせが来たとき、答えられる状態にしておくためです。特に人物や商品が写っている写真では、この記録が効きます。
どこまで直すか決めておく
技術的にできることと、やってよいことは別です。
ゴミを消す程度なら誰も気にしませんが、人物を足す、いなかった物を置くとなると話が変わります。境目を先に決めておくと、迷いません。
用途ごとに線を引いておくのが実務的でしょう。宣伝用の素材、記録用の写真、報道に使うもの。それぞれで許容される範囲が違います。
出典
画像生成の仕組みについては、下記の論文に基づきます。加工履歴を示す来歴情報の仕様は、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)の公式資料を参照しました。

