同じ「文章を書く」でも、AIが得意なものと苦手なものがはっきり分かれます。
分かれ目は長さでも難しさでもありません。何が決めているのかを押さえると、任せる前に見当がつきます。
得意なもの
型が決まっている文章。これが最も安定します。
お礼のメール、日程調整の連絡、断りの返信。書き方の作法が世の中に大量にあり、それを学習しているからです。むしろ人が書くより無難に仕上がることが多い。
言い換えも得意です。硬い文を柔らかくする、長い文を短くする、箇条書きを文章に直す。元の情報が手元にあり、形だけを変える作業だからでしょう。
それから、たたき台を作ること。白紙から埋めるのは人間にとって重い作業ですが、AIは躊躇しません。出てきたものを直すほうが、ゼロから書くより速い場面は多い。
苦手なもの
事実を並べる文章です。
経歴、実績、数値の報告。ここで起きるのが、書かれていないことを補う現象です。OpenAIの研究者らの論文は、その理由を評価の採点方法に求めています。確信がないときに黙るより推測したほうが点が伸びる採点で育っているため、空欄を埋める振る舞いが選ばれる。
経歴書を書かせると、やっていない仕事が混ざる。実績を整理させると、数字がわずかにずれる。読んで自然なだけに気づきにくい種類の誤りです。
もうひとつ苦手なのが、その人にしか書けない文章。体験、感情、固有の視点。材料が手元にないので、それらしい一般論になります。
分かれ目は「材料が渡っているか」
| 材料あり | 材料なし | |
|---|---|---|
| 型あり | 最も得意。ほぼ任せられる | 形は整うが中身が薄い |
| 型なし | たたき台としては有効 | 最も苦手。作文になる |
この表が使い方の指針になります。苦手な象限に入る仕事は、材料を渡すか、型を決めるかで別の象限へ動かせる。
経歴書なら、事実を箇条書きで渡してから文章にさせる。体験談なら、覚えていることを箇条書きにしてから整えさせる。手間が増えるように見えて、直す時間が減ります。
材料の渡し方
材料を渡すといっても、整った文章にする必要はありません。
箇条書きで十分です。むしろ雑なメモのほうがよい場合もある。整えてから渡すと、その整え方に引きずられて出力が硬くなることがあります。
日付、数字、固有名詞は正確に。ここが渡っていないと、結局は補われます。逆に、言い回しや順序は気にしなくてよい。そこを整えるのがAIの仕事です。
分量の目安としては、書かせたい文章の3分の1くらいの材料があれば形になります。それ以下だと、足りない部分を埋める作業が始まる。
例を1つ見せる
型を伝えるとき、言葉で説明するより実物を見せるほうが早い。
過去に自分が書いたメールを1通貼る。それだけで語調も長さも粒度も伝わります。「丁寧すぎず、かしこまりすぎない文体で」と書くより確実です。
避けたい例を添えるのも効きます。「こういうのは避けたい」を1つ見せると、外れ方が減る。
例を増やしすぎると入力が長くなるので、2つか3つで足ります。
長さは関係ない
意外に思われるかもしれませんが、文章の長さは難易度とあまり関係しません。
3行のメールでも、事実を含むなら危ない。3000字の解説でも、材料が揃っていれば安定します。
短いから確認しなくてよい、とはならないところが厄介です。むしろ短い文章のほうが、目を通さずに送ってしまいがちでしょう。
確認の重さで決める
実務的な判断としては、確認にかかる手間で考えるのが早い。
読めば間違いが分かる文章なら、任せて構いません。日程の連絡、断りのメール、資料の言い換え。
確かめるのに調べ直しが要る文章は、慎重に扱います。数字の入った報告、外部に出す実績、法令に触れる説明。全部を検証するくらいなら、自分で書いたほうが早いこともある。
この線引きは、モデルが賢くなっても動きません。確認の手間そのものは減らないからです。
文体の癖
得意な種類の文章でも、そのまま出すと機械が書いたと分かることがあります。
文の長さが揃いすぎる。語尾が同じ形で続く。太字が多い。段落の頭が接続詞で始まる。人が書いた文章は、もっとばらつきます。
気になるなら、短い言い切りをいくつか混ぜるだけでかなり変わります。全部を書き直す必要はありません。
読み返して自分の言葉に感じられれば、それで足ります。全部を疑う必要はありません。
出典
推測が起きやすい理由については、下記の論文に基づきます。

