稟議が差し戻されるのは、内容ではなく書き方であることが多い。
過去に通った文書から型を取り出し、毎回そこから始める方法を見ます。
組織ごとに型がある
一般的な書き方の指南は、あまり役に立ちません。
どの項目を先に書くか、どこまで数字を入れるか、代替案をいくつ挙げるか。組織によって期待される形が違うからです。
過去に通った稟議を3本から5本渡して、「共通する構成と、書かれている項目を抽出して」と頼む。自分の会社の型が文章として出てきます。
この型を保存しておけば、次からは渡すだけで済む。毎回ゼロから考える必要がなくなります。部署が変わっても、同じ手順でその部署の型を取り直せます。
差し戻しの理由を集める
通った文書より、戻された文書のほうが情報量が多い。
何を指摘されたかを一覧にして渡すと、注意すべき点が浮かびます。「費用の内訳が粗い」「他社比較がない」「実施後の効果測定が書かれていない」。
この一覧を、書いた後の自己点検に使う。提出前に「この観点で漏れがないか見て」と渡せば、差し戻しが減ります。
分担
| 工程 | 担当 |
|---|---|
| やりたいことを言語化する | 自分 |
| 型に沿って構成する | AI |
| 文面を整える | AI |
| 金額と根拠を入れる | 自分 |
| 想定質問を出す | AI |
| 決裁者に合わせて調整する | 自分 |
最後の工程が効きます。同じ内容でも、決裁者が費用を見る人か効果を見る人かで、強調すべき点が変わる。ここは社内の事情を知っている人にしか判断できません。
数字は自分で入れる
見積額や削減効果が、根拠なく埋まることがあります。
「人件費を月20時間削減」といった数字が、それらしい形で出てくる。稟議書の数字は後から検証されるので、出どころを言えないものは載せられません。
効果を見積もる作業自体は相談できます。「この施策の効果を測る指標として、何が考えられるか」と聞き、実際の数字は自分で当てはめる。この順番なら安全です。
通らない理由を先に潰す
書き上げたら、反対側から読ませます。
「この稟議を承認しない理由を5つ挙げて」と頼む。厳しい指摘が出てきますが、決裁の場で出るより前に見ておくほうがよい。
出てきた指摘のうち、答えられるものは文書に書き足す。答えられないものは、そもそも検討が足りていない箇所です。
全部に答えを用意する必要はありません。「そこは今回の範囲外」と整理できるなら、それも一つの答えになります。
長さを抑える
長い稟議は、それだけで通りにくくなります。
読む側は何本も処理している。1ページで判断できるものと、3ページ読まないと分からないものでは、前者から片付きます。
「何を、いくらで、なぜ今か」。この3点が最初に分かる構成にしたい。詳細は別紙に回せば、本体は短く保てます。
書き上げたものを渡して「半分の長さに」と頼むと、削れる箇所が見えてきます。自分では削りにくい部分を指摘してもらう使い方です。
申請書にも同じ手が使える
補助金や助成金の申請でも、型を取る手法は効きます。
公募要領を渡して、評価項目と配点を抜き出させる。何に点が付くかが分かれば、書くべき内容が決まります。
ただし要件の解釈は慎重に。締切、対象経費、必要書類。これらは要領の原文で確かめてください。要約で済ませると、条件を満たさず落ちることがあります。
口頭の根回しは別にある
文書が整っていても、それだけで決まる組織は多くありません。
誰に事前に話を通しておくか。どの部署が反対しそうか。ここは文書の外側の話で、任せられない領域です。
ただ、相手ごとに説明の切り口を変える作業は相談できます。「経理に説明するなら、どこを強調すべきか」。同じ内容の見せ方を複数用意しておくと、話が早い。
社内の情報を入れるとき
稟議書には、未公開の計画や取引条件が入ります。
型を抽出する段階では、具体的な中身は要りません。金額を伏せ、取引先を記号に置き換えても、構成は取れます。
実数を入れるのは、手元で仕上げるとき。この順番にしておけば、規約を気にせず進められます。
人事に関する稟議は、特に慎重に。評価や処遇の話には個人の情報が含まれます。構成の相談にとどめ、中身は持ち込まないのが無難です。
書けたかどうかで判断する
稟議を書く作業には、考えを整理する役割もあります。
手が止まるのは、たいてい自分の中で詰まっていない箇所です。効果を書けないなら効果が見えていない。代替案を書けないなら比較していない。
その詰まりごと埋めてもらうと、整った文書はできても、質問されたときに答えられません。書けない部分は自分で考える。ここだけは省かないほうがいい。
出典
根拠のない数字が出る理由は、下記に説明があります。

